くまぷー、英語教員集中研修に参加する（転載-2）

PartⅢ（二日目・１限）

今日は研修の二日目だ。初日は開講式とオリエンテーションがあったので演習は３コマであったが、二日目からは朝から演習だ。１コマ８０分で、１日４コマになってしまうのけっこうきつくなる。くまぷーは現役の大学生のときだって「１日４コマ」には耐えられなかった。でも何とかしのぐしかない。 　幕張本郷からバスに乗ると千葉高定時のO田先生といっしょになった。昨日カフェテリアでいっしょに昼食をとった人だ。車が趣味で絶版車のホンダ・ビートを２台も所有していると言う。くまぷーも平成元年式のR３２GTRに乗っているので話があう。 　さて今日の研修だが一つのテーマに３コマの演習が割り当てられている。今日は４コマあるのでテーマを２つ扱うことになる。最初は「A CHANGE IN CLASSROOM ORGANIZATION AND MANAGEMENT」。これが３コマ分。次が「A FOCUS ON MEANING AND INFORMATION IN LANGUAGE」。これに４限目の１コマ。残りは次の日にやる。 　それでは１限から。先生はJeffさん。カナダ人だ。この方が１限と２限を担当する。最初に５つのアクティビティを紹介される。そのアクティビティとは下記の５つだ。

アクティビティ 特徴 １ Brain Storm あるテーマに沿って思いついたことをガンガン言う。 発言の質より量を重んじる。 発言についての批評は厳禁。 ２ Dictagloss 書取の一種。生徒は教員の言ったことのキイワードや キイフレーズを書き取る。その後で生徒はペアまたは グループになって書き取ったキイワードや キイフレーズから、先生の言ったことを再構築する。 文法的な正確さが重視される。 ３ Cloze Activity 空所補充問題。ペアワーク。 ４ Directed Reading and Thinking 生徒は小集団に分かれて下記の５つの段階を追って 文章の「読みかた」を学ぶ。 1. Preview 2. Predict the content 3. Read in sections 4. Check Predictions 5. Summarize ５ Information Gap 　ある課題と情報が生徒に与えられる。その課題を 生徒に与えられる情報は全てが同じとは限らない。 （というよりも違う情報を与えられる） 課題を達成するために生徒は必要な情報を他の 生徒から入手しなければならない。

くまぷーたちも小グループに分かれて上記５つのアクティビティをやってみて、その アクティビティを評価し、実際に勤務校で使えるかなどを討論する。（初出　2004/08/01）

PartⅣ（二日目・2限）

外は猛暑の日々が続いているが神田外語大の教室内は冷房がきいているので過ごしやすい。現場にいないお偉方は「内容・指導法を創意工夫して生徒が興味を持つような授業を…」なんてことをよく気楽におっしゃるが、このように冷房の効いた快適な環境に身をおいていると、３２度から３６度にもなる高温多湿の教室に於いては多少の「創意」や「工夫」など何の意味をも持たないということが改めて実感させられる。第二次世界大戦末期に「竹槍でB２９に立ち向かえ」と言った帝国陸軍の指揮官とどこに違いがあるのだろうか？ 　さて２時間目が始まる。この時間は教室での物理的な座席の配置について考える。生徒がやる活動によって、適する座席の配置とそうでないものがあるのは当然のことだ。５つの代表的な座席配置形式が紹介され、研修生はそれぞれの形式の長所・短所またその形式に相応しい作業にはどんなものがあるかということを討論する。 　１番目はRows形式。これは伝統的な座席配置形式でほとんどの学校で採用されている。多数の生徒と教員が向かい合う配置だ。２番目はPairs形式。生徒が教員と向かい合っているのはRows形式と同じだが、二人の生徒の机がくっついている。くまぷーが小学生のときはこの配置形式がほとんどであった。３番目はColumns形式。生徒同士が対面するように配置される。在校生と新入生の「対面式」を思い出していただきたい。あの形式だ。４番目はHorseshoe形式。これにはさらにHorseshoe Open Circle形式と Horseshoe closed circle 形式がある。Horseshoe Open Circle形式は座席を「コの字型」に配置する。 Horseshoe closed circle 形式は座席を長方形に配置する。会議をするときにしばしば使われる配置だ。最後はClusters形式だ。これはいくつかの机（４つから６つ）をくっつけて並べて教室内に机の「島」をつくる。くまぷーは中学で給食を食べるときが確かこの配置だった。班会議などでもよくつかわれる配置だ。

座席配置 長所 短所 相応しい活動 １ Rows 教員が多数の生徒を掌握しや すい 生徒主導の活動には 向いていない 講義形式の 授業 ２ Pairs 生徒が共同作業しやすい。進ん でいる生徒が遅れている生徒を 援助しやすい。 一方の生徒が 非協力的だと 悲惨な結果になる。 あたりまえ だがPair　Work ３ Columns 生徒同士、対面するあいての 様子がわかりやすい。 自分の後ろにいる 生徒の様子が わかりにくい デベート 対面式 集団見合（冗談） ４ Horseshoe 参加者全ての顔が見渡せる。 参加者の数が 限られる。参加者が あまり多くなると 机の「輪」が 大きくならざるを 得なくなり長所が 失われてしまう。 会議 ５ Clusters 集団内の作業に集中しやすい 他の集団の様子が わかりにくい 小集団による 作業

こんなことを話し合った後、普段どの配置形式をとりいれているか、またその理由を 話し合う。当然のことだがRows形式ばっかりだ。理由だってそんなのきかなくたって わかるじゃやん！！

２限目が終わるとS末さん、O田さんとカフェテリアに急いだ。学生達が休み中でもけっこう たくさん大学に来ているのだ。彼らも何かの集中講義に参加しているらしい。カフェテリアに 早く行かないと、彼らに席をとられて座るところがなくなってしまう。急げ、くまぷー！！ 負けるんじゃない！！ 　くまぷーたちは急いで行ったので席を確保することが出来た。くまぷーは５００円也の カツライスを食べて午後の演習に備えるのであった。。（初出　2004/08/02）

PartⅤ（二日目・３限）

食事した後の演習はつらい。上のまぶたと下のまぶたが仲良くなってしまう。教室の中には２０人しかいないので眠ってしまうわけにもいかず仕方がないので必死になって目をあけていることにする。こういうところにも少人数クラスの利点が現れている。生徒数が少なければ目立ってしまうので不埒なことはやりずらい。クラス規模は小さければ小さいほど良い。とくに学習意欲のあまり高くないくまぷーみたいな生徒がたくさんいる教育困難校では４０人のクラスサイズはよろしくない。「多様」な生徒がたくさん来ていれば来ているほど教師の負担は幾何級数的に増大するのだ。このような学校では早く「１学級２０人以下」が実現されるべきであろう。 　さて３限目はビデオを見て話されている内容のキーワードを書き取るという作業だ。ビデオで話している人もかなりゆっくり話しているし、教本にすでに講演の内容をまとめたページがあり、ご丁寧にもキーワードの部分を穴埋めすれば良いだけになっているので何がキーワードかを考える必要もない。多少、教科教育法に関する語彙があれば楽勝の作業であろう。 　ちなみに講演の内容は学習者の学習段階と指導者の役割についてである。簡単に言ってしまえば次のようなことになろうか。教育の目標はものを学ぶためには何をやれば良いか自分でわかる人間を育てることである。そのため初期段階では指導者は手取り足取り面倒をみてやらなければならないが、徐々に学習者が自立できるように支援し、最終的には指導者無しで上手くやっていけるようにすることである、というようなことだ。ま、当たり前と言えば当たり前のことだ。こんなことをいい大人の前で日本語で偉そうにしゃべったらぶっとばされてしまうかもしれない。 （初出　2004/08/03）

 

PartⅥ（二日目・４限）

話の時間軸がずれてしまうが許して欲しい。明日は８月４日。この夏期研修の最終日だ。この最終日には研修生の代表が模擬授業をやらされることになっている。人の良いくまぷーは老練なSさん、K安さん、M信さんの謀略にはめられて模擬授業をやらされるはめになってしまった。O田さんの話によれば「S末さんはひとにやらせるのが上手いんだよ、昔から」とのこと。くまぷーはどうやら「木に登ら」されてしまったようだ。明日模擬授業をしなければならないのだから、ホームページの更新なんてしていないで明日の準備でもした方がいいのだろうがぜんぜんそんな気にならない。ま、いつものように「出たとこ勝負」「そん時ゃ、そん時」でやるしかない。うまくやったからといって何かいいことがあるわけでもないし、失敗したからといって命を取られるわけでもない。そんなに大騒ぎすることでもないのだ。適当にやればいい。 　さて時間軸をもとに戻そう。研修二日目の４限目だ。４限目は６号館に移動だ。３時間目の講師Allｙに場所を尋ねる。Allyによると一番新しい建物でとてもきれいなところらしい。６号館に行ってみるとなるほどAllyの言う通りモダンな建物だ。一階・二階とも広いオープンスペースになっており、そこでビデオやDVDが見られるようになっている。教室も全てガラス張りで外から内が丸見えだ。教室に入ると４カ所以上にビデオとモニターが設置されている。教師はは学生達にヘッドフォンを使わせて同時に異なる内容のビデオを見せることができる。この作りならば簡単にインフォメーション・ギャップを取り入れた活動を学生にやらせることができる。恥ずかしながら、くまぷーはこのような設備をもった教室は初めてだった。くまぷーが約２０年前に通ったC大の教育学部にはこのような設備はなかった。後で気がついたことだが、６号館の教室は全てこのような作りになっていた。県内の公立高校で一つでもこのような設備を持つところがあるのだろうか？おそらくクラスの全生徒に同じものしか見せられない昔ながらの視聴覚教室しかないであろう。 　くまぷーはなんでも上達しようと思ったら、環境作りには気を遣わなければならないと思っている。そして良い環境を作るためにはけっこうお金がかかるものなのだ。何かに上達しようと思ったらここで使うお金を絶対に惜しんではいけないと思っている。特に下手くそや初心者には（可能な限り）良い環境を与えるべきだと思っている。 　 　コンピュータを扱えない人によく「使いこなせないから…」とか言って自分専用のものを買わない人が多い。前にも書いたが壊したらどうしようと学校のパソコンを恐る恐る触っているうちは上達は望めない。投資を惜しんで失敗を恐れていては上達しないのだ。 　話が脱線してしまったついでに言うといくら創意・工夫しようが（同程度の才能の持ち主ならば）優れた環境で学ぶ者には勝てないのだ（もっとも現在の教育現場には「創意・工夫」をする時間的余裕もないが）。前にも書いたが高温多湿の教室はどう工夫しても冷房の効いた教室には勝てない。冷房完備にするには多額の費用がかかるのはわかるのだがお金は使うべきときには使わなければならない。冷房がはいれば６・７・９月の３ヶ月間、生徒も快適に学習できるのだ。今年のように猛暑のなか授業に集中しろと言っても無理だろう。 　ふだん気楽に「創意・工夫して…」という言葉を使う人にこそ是非「創意・工夫」してもらって公立校の炎熱地獄を何とかしてもらいたい。 　話が脱線してついに転覆し崖下まで転落してしまったようだ。もとに戻らない。申し訳ないが二日目の４コマの内容については次に回すことにする。 （初出　2004/08/04）

PartⅦ（二日目・４限）

さあ今度は話を脱線させないようにしよう。普通の先生は話が脱線しても途中で軌道修正することができるが、くまぷーの場合、そのまま崖下まで転げ落ちてしまう。 　３限目まででテーマ３の研修が終わり４限目からはテーマ２の研修が始まる。前にも書いたが１つのテーマにつき３コマの演習が割り当てられているので今日はテーマ２の第１部だけやって残りの２部は明日の１限・２限にやることになっている。 　テーマ２には「A FOCUS ON MEANING AND INFORMATION IN LANGUAGE」というタイトルがついている。何やら厳めしいタイトルがついているが具体的には以下のことをやった。

第１部 エッセイを読む。その内容に関する５つの問題に答える。そして各々の問題についての何を問うているのかなどを分析する。そして最後に実際に問題作りの演習をする。 第２部 トランプを使った活動など教室で使えるであろう数種類の活動を体験する。 第３部 誤謬と訂正について検討する。

上に書いたようにくまぷーたちは教本に載っている堅めの文章を読んだ。文章の 内容は教育学部の学生が教科教育法の授業で読むような内容であろうか。そして その文章に関する５つの問題に答えた。問題を解かされるといってもそのレベルは たいしたことはない。センター試験の方が上かもしれない。ま、ここではこの５つの 問題は後でやる「いろいろな種類の問題」の実例として出されているだけなのだから 問題のレベルはあまり重要ではないのだ。 　ちなみに問題にはどのような種類があるかというということだが下記のように５つに 分類していた。

問題の種類 その問いに答えるためには… １ 主題を問うもの 文章全体を読んで理解する ２ 単なる事実・情報を問うもの 本文の中のキイワード・キイフレーズを見つける ３ 計算を必要とするもの 本文の中のキイワード・キイフレーズを見つけ、 それをもとに計算する ４ 語彙力を問うもの あらかじめ十分な語彙を持っていること ５ 推理・推論を必要とするもの 本文より必要な情報を集め、それらをまとめる

この後、くまぷーたちは４人一組に別れた。さらにその中で二人ずつA組・B組に 別けられた。そしてA組用・B組用にそれぞれ簡単な文章（レベルは易しめの 英語Ⅰの教科書くらいか）が与えられ、各組はそれぞれの文章の内容をもとに 上記５種類の問題を作った。そしてその問題をA組はB組に、B組はA組に実際に 解いてもらって、問題の適否を検討した。 　この研修ではどんなことをやるにしても我々にペアワーク・グループワークを させるようになっている。こうすることによって研修生により多く英語をつかう機会を 与えて、さらに「生徒がより英語を使わなければ話さなければならない状況を 作るにはどうしたらよいか」を研修生に体得させようとしているんだね。 　上手く仕組まれているなぁ。この手法がくまぷーの勤務校で実践できるかどうかは 別にしてためになったよ。 （初出　2004/08/05）